2015/10/27

仮名のローマ字表記を習う以前に英語の綴りを教えるべき

【新・英語屋通信】(54)

 世羅洋子氏によるYESの英語教室では、小学生が「仮名の代わりにローマ字を使って書く方法」を学校で教わる以前に、英語の綴り方を書けるように指導しています。世羅氏はそのとき、両者がまったく違うものであることをしっかり伝えています。
 小学2年生の男子に英語で算数を教えながら、“Three and six makes nine.”と世羅氏が言うと、生徒がすかさず“How do you say‘makes’in Japanese?”と聞き返してきました。世羅氏が make は「作る」という意味ですと教えて“Can you write it down?”と尋ねました。
 生徒はすぐさま、〔m〕に続けて〔a e〕と書き、空白部に〔x〕を入れて、‘maxe’と表記しました。その子が box の〔x〕が〔ks〕の音になると知っていたからですが、最後の音が〔s〕であると指摘すると、ただちに‘makes’と書き直しました。
 先に音声を入れて、そのあと書き言葉を綴る手順をとれば、こうした現象が起こる実例を知って、なるほどと驚かされました。英語話者の子供が英語の綴りを覚えるのにさいして、Phonics(フォニックス)の手法を利用する必然性を改めて実感させられました。
 この2年生の子は、5年生のお兄ちゃんが英語で質問されて答える英文をすらすら書いている様子を横で見ながら、自分も早く書きたいと思って、自然に身に付けたようです。英語音を正しく発音できて、アルファベット26文字を覚えれば、PV法のチャートを見ながら、英単語を綴れるのは「当然のおまけ」でしかありません。
 英語の発音と綴りは、PV法で覚えられますが、世羅さんは40年間の英語指導の経験を踏まえたうえで、とにかく話し言葉を優先させるべきと確信しています。何事であれ、学べば必ず「成熟度」をチェックする必要がありますが、英単語の綴りにあっては、PV法の反復練習がそのまま習熟度のガイドになります。
 なお、makes を仮名で「メイクス」と書くので、ローマ字は me・i・ku・su としています。eight(〔-e-〕〔-i-〕〔t〕)があるから、mei の部分は似たように聞こえますが、kusu には日本語特有の母音の「ウ」が〔k〕〔s〕にくっついているので、英語話者が聞き取りにくくなります。仮名のローマ字表記は、英語の綴りとは別物です。2年生君が makes を英語のまま捉えていることは明白です。
(編集部)
2015.10.27(火)